大阪市城東区、本町、森ノ宮などの大阪メトロ中央線沿線や深江橋駅から交通便利なリオムメンタルクリニック

診療予約はこちら

宮木こういちチャンネル

心療内科・精神科・一般内科
宮木医院リオムメンタルクリニック
〒536-0022
大阪府大阪市城東区永田4-8-10
TEL:06-6180-4111

オンラインでの初診予約(再診予約は受診後会計時かお電話のみ)は基本的に24時間受付可能です。
電話受付は開院日の診療時間帯のみで、混雑のため繋がりにくくなることがありますことをご了承願います。

ご本人の治療意思が乏しい場合にできること(CRAFTの解説と家族向け情報)

不登校や依存症再発予防の治療をためらう方を持つ家族を対象とした、コミュニティ強化と家族訓練CRAFT(Community Reinforcement and Family Training「クラフト」)に基づいた解説記事

📌 このページは、こんな方へ

  • 「本人が治療に行こうとしない」
  • 「何度も治療について話してきたが、興味を示さない」
  • 「家族としてできることがあれば、やりたい」
  • 「でも、本人に無理矢理治療を勧めるのは…」

こんなジレンマを感じている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

【重要】治療を拒否している本人を、無理に連れてくることはできません

申し訳ありませんが、当院は本人が治療受診を希望していない場合、本人を「無理矢理受診させる」ことはできませんし、当院が説得することもできません。これは医学倫理上、本人の自由意志の尊重を最優先にしているからです。しかし、ご家族でできることはありますので、治療の前段階に役立つ情報を記載しますので、ご参考にしてください。

 本人が「自分から」治療に向かうようになるために、ご家族ができることは、思っていらっしゃるよりもたくさんあるかもしれません。

なぜ、本人は治療を拒否するのか?

依存症から回復する本人の多くが、治療受診を躊躇する理由:

よくある本人の心理実は…
「自分は病気じゃない」「単なる癖だ」依存症の本人は、しばしば病識がない状態
「医者に行くほどのことではない」実は深刻な状態でも、本人には認識できていない
「病院に行ったら、怒られるんじゃないか」「否定されるんじゃないか」
家族から繰り返し責められてきた経験から、医療機関にも不信感を持つ
「どうせ変わらない」「治療しても無駄」長期化による諦めと自信喪失
「行ったら、最後まで続けられるのか」不安と先延ばし心理

重要なポイント:本人が悪い、意志が弱いのではなく、これは依存症という病気の「特徴」なのです。
依存症は、脳の報酬系に変化が起きている病態であり、「本人の努力」や「心の強さ」では、簡単には改善しません。

家族ができることは「3つの柱」

むしろ、本人が治療につながるための環境作りは、家族の関わり方で大きく変わります。

 本ページでは、米国で30年以上の実績とエビデンスの蓄積を持つ「CRAFT」という家族支援プログラムの考え方を基礎に、以下の3つを説明します。

1️⃣ 依存症について「正しく理解する」

これまでの間違った考え方:

❌ 「本人の努力が足りない」
❌ 「意志が弱いからだ」
❌ 「ダメな人だからやめられない」
❌ 「きつく言ってやめさせよう」

正しい理解:

✅ 依存症は「脳の病気」です
✅ 本人の意志の問題ではなく、医学的な治療が必要です
✅ 責め続けると、本人はますます防衛的になり、治療から遠ざかります
✅ 「この人は、今、依存症という病態にある」と捉えることが第一歩です

何が変わるのか?

家族自身の「心の負担」が軽くなります。「自分が何とかしなければ」という無力感から解放され、本人をサポートする方法が見えてきます。

2️⃣ 本人への「関わり方」を学ぶ

依存症の本人に対して、最も逆効果な対応があることをご存知ですか?

❌ 逆効果になる対応

対応なぜ逆効果か
説教・小言本人は「攻撃されている」と感じ、より心を閉ざす
責める・非難する本人の自尊心を傷つけ、「どうせダメだ」という諦めが強まる
本人の代わりに問題を解決する本人が「自分で何とかしなくてもいい」と依存し続ける
強く否定する・禁止する反発が強まり、隠れてやるようになる

✅ 効果的な対応

【重要】話しかけるときの4つのコツ

1. 「簡潔に」伝える

❌ 「あなたね、このままだと本当に大変なことになるよ。社会に出られなくなるし、将来は…」と長く説く
✅ 「治療に行ってみたら、どう?」「回復した人の話、聞いてみない?」と短く

2. 肯定的な表現を使う

❌ 「ゲームばかりやってないで」「飲むのをやめろ」
✅ 「別のことも一緒にしてみようよ」「健康的に過ごせると、君も気持ちいいんじゃないかな」

3. 自分の気持ちを伝える(「I メッセージ」を使う)

❌ 「あなたは何もやる気がない。親として失望している」
✅ 「私は、君の身体と将来のことが心配なの。治療を受けてもらえると、お母さんも安心できるんだ」

4. 相手を尊重する

❌ 「もう終わり。病院に行きなさい」と決めつける
✅ 「治療に行くことについて、どう思う?何が心配?」と、本人の気持ちを聞く

3️⃣ 「本人が治療に向かう環境」を整える

もう一つ、重要な観点があります。

本人が治療に向かうタイミングは、「本人が『このままじゃダメかもしれない』と少し気づいた瞬間」です。

その瞬間を逃さないために、ご家族ができることは:

📍 ターゲット1:本人が「楽しい」「充実した」と感じる経験を増やす

依存症の人は、依存の対象(ゲーム、飲酒など)以外に「楽しい」ことがない状態にあることが多いです。

ご家族からの提案例:

  • 「一緒にテニスをしよう」「昔好きだった映画、見ない?」
  • 「休みの日、短いドライブに行こう」
  • 「お母さんの手料理、食べてくれない?」

これが何をもたらすのか?

→ 「依存の対象以外で、気持ちが満たされる経験」を通じて、本人は無意識に「他の活動もいいな」と気づき始めます。同時に、ご家族との関係が改善され、「この人たちの言うことなら聞いてもいいかな」という信頼が生まれます。

📍 ターゲット2:本人の「小さな良い行動」を認める・褒める

本人が、依存の対象からちょっと目をそらした、早く起きた、返事をした…こうした「ごく小さな行動」に対して、家族が「認める」ことが極めて重要です。

例:

  • 「朝、起きてくれたんだ。ありがとう」(説教を付け足さない)
  • 「親の話に返事してくれた。嬉しいよ」
  • 「ゲームの時間を少し減らしてくれたんだ」

これが何をもたらすのか?

→ 本人の「良い行動」が家族から認識されることで、その行動が増えていきます。同時に「お母さん・お父さんの期待に応えようかな」という感情が育まれ、やがて「治療に行ってみてもいいかな」という考えに繋がります。

📚 「CRAFT」って、何ですか?

CRAFTは、米国で1970年代に開発された、依存症者を家族に持つ方のための支援プログラムです。

実績:

  • 治療に抵抗していた本人が、治療に向かう確率:64~86%
  • 家族の心理的ストレス、抑うつ、不安:著しく改善
  • 国内では、厚生労働省の「ひきこもり支援ガイドライン」にも位置づけられています

CRAFTの3つの目的:

1. ✅ 本人が治療につながる
2. ✅ 本人の問題行動が減る
3. ✅ ご家族自身の生活の質が向上する

最後の点が大切です。多くのご家族は「本人のことばかり」になっていて、自分たちの人生が二の次になっています。CRAFTでは「ご家族自身が元気で、自分の人生を大切にすること」も重視しているのです。

📌 治療受診を拒否している本人を持つご家族へ:「3つのステップ」

ステップ1:まずは「ご家族だけで」相談に来てください

ご本人は来なくて大丈夫です。むしろ、来ない方が良いこともあります。

お悩みが強い場合、ご家族が独りで悩まず、専門家の話を聞くことが、その後すべての対応を変えることがあります。当院の治療はすべて保険診療の枠組みで行っているため、受診者の保険証をお持ちくだされば健康保険が適応され、初診3000円/再診2000円程の自己負担となります。

相談内容の例:

  • 「本人が治療を拒否しているのですが、家族として何ができますか?」
  • 「今、本人に何か言うと、かえって悪くなるのでは?」
  • 「家族自身が、疲れ果てています。どう対応したらいいですか?」

ステップ2:ご家族の「関わり方」を学ぶ

当院では、以下の支援を提供しています:

  • 1対1で、ご家族の状況に合わせた対応をご提案します
  • ご家族(キーパーソン)の精神的安定がご本人の安定や治療への前向きな気持ちの醸成に役立つため、ご家族に不眠や過度な不安、イライラなどの症状がみられるときは最小限の投薬での治療を提案します
  • 複数回の相談で、少しずつ実践していきますが、当院での対応が難しいケースなどは通院が難しいケースもありますのでご了承ください

ステップ3:本人が「治療を受ける気になった」とき、すぐに対応

ご家族の対応が変わると、本人にも変化が起こることがあります。

「あれ?お母さん・お父さん、雰囲気が違うな」
「最近、責められていないんだ。もしかして…」
「この人たちは、俺のことを信じてくれてるんだ」

こうした気づきが、やがて本人の「治療への心の扉」を開きます。

その瞬間が来たとき:

当院が対応いたします。本人のご受診を調整させていただき、必要に応じて「リオマープ」への参加をご提案させていただきます。

❓ よくあるご質問

Q1:本人が「医者になんか行かない」と言っています。強制的に連れてくることはできませんか?

A:申し訳ありませんが、本人の同意なしに治療を開始することはできません。

 ただし、ご家族の関わり方を変えることで、本人が自発的に治療を希望するようになることはありますので、本人の受診が難しい場合まずはご家族の相談にお越しください。

Q2:本人に「治療に行ったら?」と言ってもいいですか?それとも、何も言わない方がいいですか?

A:「何も言わない」のは、最善の対応ではありません。ただし「言い方」が極めて重要です。

避けるべき言い方:

  • 「行きなさい」(命令)
  • 「行かなきゃ、大変なことになるよ」(脅し)
  • 「何度も同じことを言わせないで」(責め)

効果的な言い方:

  • 「以前、テレビでやってたんだけど、回復した人の話、面白かったよ」
  • 「専門家の話を聞いてみると、案外楽になるかもしれないよ」
  • 「行ってみない?」「考えてみない?」と、選択肢を提示する形

Q3:本人が同意しない状態で、私たち家族だけで「リオマープ」に参加することはできますか?

A:いいえ、依存症再発予防プログラム「リオマープ」はご本人のみが対象のプログラムです。

Q4:家族が相談に来ると、本人に知られてしまいませんか?秘密を守ってくれますか?

A:秘密保持は、医療の基本原則です。ご安心ください。

ご家族の相談内容は、本人には伝えません(医療機関として、厳格に管理します)。

Q5:「家族が変わることで、本人も変わる」というのは、本当ですか?科学的根拠はありますか?

A:はい、科学的エビデンスがあります。

米国国立アルコール乱用・依存症研究所NIAAA(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism)による大規模研究では:

取り組み本人の治療参加率
CRAFT(家族支援)を受けた家族64~86%
従来のプログラム30%程度
何もしなかった場合10%程度

つまり、ご家族の対応で、本人の治療参加率が大きく変わることが実証されているのです。

また、 日本でも厚生労働省のひきこもり支援ガイドラインで、CRAFT的家族支援が標準的アプローチとして位置づけられています。

💬 最後に、ご家族へのメッセージ

「本人が治療を拒否している」という状況は、ご家族にとって、極めてストレスが多いと思います。
長年、本人のことを心配し、何とかしようと頑張ってこられたと思います。その努力は、決して無駄ではありません。
ただ、これまでのアプローチが「本人を変えようとする」ものだったとしたら、ここで一度、視点を変えてみてはどうでしょうか。

「本人を変えるのではなく、ご家族の関わり方を変える」

この一転換が、実は、最も確実に本人を治療へ導く「道」になることがあるのです。

 ご家族自身が、まず元気になってください。ご家族が元気で、穏やかな雰囲気が家に戻ってくると、本人も変わります。当院でできることは限られますが、その「変化」を少しでもサポートできればと考えていますので、お気軽にお問い合わせください。お電話(06-6180-4111、ただし診療日の診療時間帯のみ対応で、混雑のためつながりにくい場合もございます)またはWEB予約フォーム(24時間対応)よりご予約ください。健康保険適用の診療のみ行っており、自費診療はありませんので、安心して受診いただけます。

リオムメンタルクリニック 一同

クリニック案内

アクセス

  • 電車
    大阪メトロ中央線
    深江橋駅1番出口から徒歩3分
    JRおおさか東線・学研都市線
    放出駅から徒歩15分強
  • バス
    大阪シティバス
    地下鉄深江橋(西)停留所から徒歩4分
    地下鉄深江橋(北)停留所から徒歩5分

医院名
宮木医院リオムメンタルクリニック
院長
宮木 幸一
住所
〒536-0022
大阪府大阪市城東区永田4-8-10

診療科目
心療内科・精神科・一般内科
電話番号
TEL:06-6180-4111