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心療内科・精神科・一般内科
宮木医院リオムメンタルクリニック
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病気(発達障害)の解説

発達障害とは

 発達障害という言葉は一般の方にも有名になってきましたが、その実態は非常に多様であり、正確に理解されている方は少ないかもしれません。生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点は共通項ですが、個人差がとても大きいという点も特徴の一つです。発達障害の様々な特性については、政府広報オンラインの下図(これ以外の図はすべて宮木医師作成)でまずイメージを持ってもらうのが良いと思います。(後述しますが、世界的に利用されている米国の診断基準の最新版DSM-5では、自閉症やアスペルガー症候群という言葉は使わなくなり、連続性をもったASD(Autism Spectrum Disorder、日本語では自閉スペクトラム症)と呼ぶようになっています。)

 発達障害の臨床的定義については、臨床家や研究者によりばらつきはありますが、標準的な考え方としては米国精神神経学会の診断基準DSMに基づいた以下の3つが発達障害の主な構成要素となっています。

  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • ADHD(注意欠如・多動症)
  • LD(学習障害)


 特に自閉スペクトラム症ASD(旧診断名であるアスペルガー症候群を含む)と、注意欠如・多動症ADHDの特性は大きく異なり、以前の診断基準(DSM-IV、ディーエスエムフォー)ではASDとADHDは合併しないとされ、診断時にはもう一方を否定する必要がありました。

 これについては臨床上の感覚として違和感がありましたが、現在の最新の診断基準では下図のように合併もありうることが明確になっています。(現場の感覚からすると当然ともいえますが)

 この自閉スペクトラム症ASD(旧診断名であるアスペルガー症候群を含む)と、注意欠如・多動症ADHDの特性は大きく異なり、両者の程度に応じた対応が望まれるのですが、一般の方だけでなく精神科医や心療内科医といった医療従事者側の正しい理解が十分でないこともあるのが現状です。ASDとADHDについてもう少し詳しく見ていきましょう。



ASD自閉スペクトラム症とは

 近年、職域での職場不適応や難治性うつ病の背景因子の一つとして発達障害のひとつである自閉スペクトラム症が注目されています。宮木教授らの研究からも、この疾患の特性(自閉症特性)が高いとストレスに柔軟に対応することが難しく抑うつになりやすいことがわかります。(臨床的感覚としては実感のある方も多いと思いますが、この感覚を傾きの差として視覚化し、その差異を統計的に明らかにした図です)

実際に、自閉症傾向が強まるにつれて、抑うつになりやすい傾向も伺えます。

 この自閉スペクトラム症の有病率は日本人の成人で1.0%、男女比は男1.8%、女0.2%と男性に多い(日本社会精神医学会誌2012)のですが、イギリスの児童精神科医ローナ・ウイング(お嬢さんが当事者で、後述のWingのスペクトラム仮説のウイングさんです!)が見つけた三つ組み症状(Wing's triplet、三徴ともいいます)という有名な3つの障害が見られます。

1)社会性の障害

 他者との社会的相互関係の構築・維持が困難

 自分のルールと社会のルールのずれ(暗黙のルールがわからない)

2)コミュニケーションの障害

 話し言葉の異常(過度に丁寧、繰り返しが多い、一方的な会話)

 口調と音量調節の異常

 言葉の理解の問題(文字通り受け止める、冗談への理解のずれ)

 非言語コミュニケーションの問題(仕草や表情の適切な表出や理解が困難)

3)想像力の障害/反復した常動的動作

 柔軟で創造的な思考の困難(ごっこ遊びができない)

 応用が苦手

 行動の前に結果を予想するのが苦手

 変化への抵抗(日常の決まり事がしっかりしすぎ、特定の対象への興味集中)


 自閉スペクトラム症の診断は、Wingウイングの自閉症スペクトラム(連続)仮説が採用されたDSM-5に改訂された際に、カテゴリー的診断から、その程度が連続的に分布する量的診断へと変わりました。つまり、今まではここまでが正常、ここからが自閉症、といった白黒のはっきりした診断基準だったのが、自閉症という診断名がなくなって、連続的なもの(スペクトラム)として診断されるようになったわけです。このことは宮木教授らが国際誌で発表した最新の研究成果(Autism 2017、下図)に見られるように、日本人の一般的な働く方でもその傾向が連続的に分布することが疫学的に示されています。

 日常生活に支障を来さなければ自閉症傾向が強くても普通に生活している方も多いですし、環境によっては自閉症傾向がそんなに強くなくても学校や職場で衝突を繰り返して診断・治療が必要になる方も出てくることになります。

 後述のADHDのように、インチュニブ, ストラテラ, コンサータといった有効な薬物療法はありませんが、逆に環境調整や苦手なことを自覚してそれを補う練習(ソーシャルスキルのトレーニング)をすることで、普通にどころか標準以上の能力を発揮して社会生活を送る方もたくさんいます。

 我々の研究でも、自閉症特性をさらに細かく見た時の特性(下位尺度といいます)の一部は、むしろ生産性を高めることが示唆されています。

 我々RIOMH(リオム)では下記のような当事者の特性を視覚化して苦手なことを意識化するツールを開発しています。このような無償のツールを使って社会適応力を高めることは、薬物治療とは別の機序で2次的なメンタルヘルス障害を防止し、本来の実力を発揮しやすくなるため有用と思われ、エビデンスの蓄積に努めています。



ADHD注意欠如多動症(注意欠如多動性障害)とは

 ADHDはAttention Deficit / Hyperactivity Disorderの略で、注意欠如・多動症とか注意欠如多動性障害とも言います(欠如を欠陥と訳されることもありましたが、DSM-5日本語版では欠如に統一されています)。読んで字のごとく、不注意や多動性、衝動性によって生活に支障をきたしている状態を指します。

 人の話を集中して聞けない、忘れっぽい、体の一部を常に動かしてしまう、しゃべりすぎてしまう、思ったことをすぐに口に出してしまうなどの特徴がありますが、もちろんこういった特徴があるからといってすぐにこの診断がなされるわけではありませんし、生活に大きな支障がなければ診断も治療も必須ではありません。すなわち、自分の特性を知り、それを自覚して学校や職場で支障がない術を自然に(あるいは意図的に)身に着けることで問題発生を防げる場合もあります。

 ただ、こうした症状が強く見られる方もたくさんいて、上記のような工夫ではなかなか抑えられずに悩まされている方も多く、それは努力不足や育て方の問題というものではありません。これは脳の機能障害(より詳しく言うとノルアドレナリンという神経伝達物質の機能不全)が主たる原因であって、ご本人や家族のせいではないことがわかっているのです。

 ADHDでは機能障害が見られる脳の部位もある程度わかっていて、前頭前野とよばれる脳の一番前のあたりの機能が落ちています。この前頭前野の本来の機能は、自分自身の目標に従って考えや行動を整えることや、適切な社会的行動の調節に関与することであり、この部分の機能が生まれつき障害されていることによって不注意や多動性、衝動性といった症状を来すわけです。

 ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるストラテラ(一般名:アトモキセチン)は前頭葉に働きかけ、ノルアドレナリントランスポーターの働きを阻害してシナプス間隙のノルアドレナリン濃度を高めることで、上記のような前頭葉の本来の機能を高める(すなわち不注意や多動性、衝動性を減少させる)ことが期待できます。(本剤に限りませんが、頭痛や吐き気、のどの渇き、食欲減退、動悸などの副作用が出ることがあり、また効果が出始めるまでに1-2週かかることが多いですが、一部の方にはよく効く実感があります。)

 またコンサータ(一般名:メチルフェニデート)という中枢神経刺激薬はドーパミントランスポーターやノルアドレナリントランスポーターの働きを阻害することで、脳内で働くドーパミンとノルアドレナリンの量を増やすことで前頭葉本来の機能を高める(すなわち不注意や多動性、衝動性を減少させる)ことが期待できます。こちらはストラテラに比べて即効性がありますが、頭痛や吐き気、のどの渇き、動悸といった副作用の他に食欲減退、不眠、体重減少等が比較的多くみられ、耐性や依存性にも注意が必要とされています。

 最近(2017年5月薬価収載)ではインチュニブ(一般名:グアンファシン)というα2受容体作動薬も使えるようになってきて(もともとは血管収縮を抑える降圧薬として開発されたものですがADHDへの有効性がわかってきました)、交感神経の過剰な興奮を抑えることによって多動性や衝動性を押さえることが期待されます。ただし、この交感神経の興奮を抑えるという作用機序からも明らかなように、不注意には効果を期待できないことや血圧低下・徐脈には注意が必要です。当初は小児(6歳以上18歳未満)への適用のみ認められていましたが、現在(2019年6月から)は成人への適応も認められるようになりました。

 以上のように我が国でもADHDの薬物治療の選択肢は広がってきており、それ自体は好ましい事です。ですが先ほど述べたように、自分の特性を知り、それを自覚して学校や職場に適応する術を身に着けることで問題発生を防いだり、そうした特性があっても支障が出ない環境を整えることが基本であり、心理療法や社会的なサポートも有用ですから、薬はあくまで補助的に考えていただければと思います。



LD学習障害等のASDとADHD以外の問題となる障害

 復職サポートや就労支援で成人の発達障害を診ることが多い私からみると、ASDとADHDが発達障害の大きい部分を占めていますが、その他にもLD(学習障害)や併存しやすい各種感覚過敏が問題となることが多いです。

 先ほど紹介した、我々RIOMH(リオム)が開発した当事者特性を視覚化して苦手なことを意識化するツールのフィードバック例から、併存しやすい感覚過敏、不器用さ、読字障害、書字表出障害などとその対処例を抜粋した表を挙げておきます。



最後に

 発達障害に関する最新の疫学研究知見や新薬の話など駆け足で紹介しましたが、発達障害が多様であることが少しでもわかってもらえたならば筆者冥利に尽きます。発達障害の方を診ていて思うのは、自分自身の体調がどういう状態か、どういったときに医療従事者に相談すべきかのタイミングがわからないという方が比較的多く、無理を重ねて憔悴しきった状態で来院されるなど二次性のうつを重症化させてしまう例が多い印象を持っています。

 自分の体調や気分(抑うつ度)がどのような状態かを国際的に確立された質問紙で数値化して自覚することは、意味のあることだと思っており、下記のようなフィードバックを発達障害者の就労支援団体と取り入れることも始めています。

 いずれにしても、発達障害は多様でそれに影響を与える因子も様々ですから、適切な薬物療法や心理療法とともに、家族や支援者のサポートや周囲の理解、福祉制度の活用といった社会的なアプローチも併用して、この障害で悩まれている方々の一人でも多くが、無用の衝突を回避し、本来の力を発揮してその人にあった社会参加ができるよう、微力ですが診療やサポートを続けていきたいと思います。

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