依存症集団療法「スマープ」「リオマープ」

認知行動療法を基盤とした依存症集団療法「スマープ」「リオマープ」

リオムクリニックの依存症解説ページでも触れましたが、「依存症」とは、何かに心を奪われて「やめたくても、やめられない」状態となり、日常生活に支障をきたすようになった状態のことです。使用のメリットよりもデメリットのほうが大きいにもかかわらず、その使用を辞めることができない状態です。ではどのような治療法や対応が有効なのでしょうか。

 依存する対象は薬物、アルコール、ギャンブル、インターネットなど様々ですが、最近は世界保健機関WHOが「ゲーム障害」Gaming Disorderをメンタルヘルス障害の一つとして公式に位置付け(ICD-11)話題となったように、オンラインゲームへの依存も世界的に注目を集めています。他にも万引きなどの「窃盗症」(クレプトマニア)や盗撮・痴漢といった「性嗜好障害」(パラフィリア障害群)など、犯罪行為と知りつつも繰り返し衝動的に行ってしまう行動も依存症であると考えられ、社会的にも重要な「疾患」(医療的なアプローチが有効なもの)で、世界各国で様々な試行錯誤が続いています。


 世界保健機関WHOから日本で唯一のアルコール関連問題の施設として認定されている神奈川県の久里浜医療センターは、院長の宮木も学生時代に研修を受けたことがありますが、東京ドームの3倍という広大な敷地の中で目の前には広々とした海岸と東京湾、その向こうに房総半島の山々が望める風光明媚なところです。ここでは有名なアルコール依存症に対する治療だけではなく、全般にわたる治療、臨床研究、教育研修、予防・情報発信を軸とした高度専門医療を提供していて、先日NHKのドキュメンタリー番組「病院ラジオ」でゲーム依存の青年が治療を受け、軽快して就労移行支援を受け始めているところが紹介されていました。宮木が関わってきた就労支援の立場からは「就労」という社会参加を通して自分の居場所を見つけていくことは依存症の再発を防ぐことに繋がり、就労支援自体がケアの側面も持ちますとても理にかなった大変良い事例と思いました。

 この久里浜医療センターは恵まれた自然環境の下で入院治療を主として行うところですが、外来ベースで行える有効な治療方法もあり、認知行動療法の手法を活用した薬物依存症に対する集団療法(依存症集団療法「スマープ」SMARPP)は、全国で100近い精神科医療機関や精神保健福祉センターで実施されています。SMARPP(スマープ)の開発者で当該領域の第一人者である松本俊彦先生(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・薬物依存研究部 部長)は治療のポイントとして、「安心・安全の保証」と「性急な変化を求めない」ことを挙げていて、「共感しながら懸念を示す」態度は重要と思いますし、「安全に失敗を繰り返す」ことを見守りながら段階的に強度の高い治療を提案していくという基本方針は多くの医療者の共感を得ていて、「スマープ」を各医療機関がアレンジしたもの(東京都多摩総合精神保健福祉センターの「タマープ」TAMARPP、大阪精神医療センターの「ぼちぼち」BOCHI BOCHIなど)が複数存在しています。(そもそもSMARPP自体がアメリカの西海岸で行なわれていた薬物依存症の外来治療プログラムを日本流にアレンジしたものであり、医療現場での風土や文化に応じて参加者の方によりマッチする形に進化してきているとも言えます)


 わたしたちRIOMHリオムでも、院長の元同僚で大学での障害者支援にも関わっている岩隈美穂先生(京都大学大学院医学コミュニケーション学 准教授)の意見を聞きながら、スマープを骨格として(認知行動療法の原理を用いた再乱用を防ぐためのスキル獲得を基盤として)、マインドフルネスのワークを取り入れながらソーシャルスキルトレーニングSSTの要素も取り入れ、「自分トリセツ」を作っていく「リオマープ」RIOMARPP(Research Institute of Occupational Mental heAlth Relapse Prevention Program)を開発しました。

 この依存症集団療法は医師一人と心理士一人が複数の患者さん達に対して行うもので、通院集団精神療法という枠組みのもと行われ、定義としては「一定の治療計画に基づき、集団内の対人関係の相互作用を用いて、自己洞察の深化、社会適応技術の習得、対人関係の学習等をもたらすことにより病状の改善を図る治療法」と法令上は位置づけられています。

 ネットや賭け事はそれ自体が悪いわけではなく、働く人の余暇として適度に楽しめれば問題はないのですが、周囲や本人が困るくらい制御が利かなくなる「依存」の状態を脱するには、特効薬もなく精神論でも片付かないため多様なアプローチが必要で、こうした外来で実施できる依存症の治療プログラムが選択肢として加わることは、関係者にメリットとなりえます。

 多様なアプローチと述べましたが、依存症は特効薬がある疾患ではなく、心理社会的なアプローチを含め複合的に対応していくことが有効とされていて、例えばNA(ナルコティクスアノニマス)やGA(ギャンブラーズアノニマス)、AA(アルコホーリックスアノニマス)のような世界的な相互援助団体・自助グループに参加したり、DARC(ダルク)のような回復施設を利用したり、医療機関でスマープやリオマープのような外来プログラムを受講したり(中毒症状が出るなど重篤な場合は入院可能な専門機関に紹介して加療)という風に、多くの関係者のサポートを受けながら回復していくことが可能です。

 また依存の問題に悩む家族や友人等(当事者含まず)の自助グループとして、Nar-Anon(ナラノン)、Gam-Anon(ギャマノン) 、Al-Anon(アラノン)などがあり、依存症者家族のサポートに役立ちうるのでご参考にしてください。

薬物依存症の回復プロセス例(朝日新聞デジタルより)

 発達障害関係では、ADHDの程度が強いほどネット依存が多いという報告も出ていますし、うつや強迫性障害、社交不安障害でも依存は多いといわれているので、こうした疾患の薬物療法と並行して、必要に応じて集団療法を治療の選択肢として患者さんが利用したいときに利用できることは有意義です。

うつや発達障害の方だけでなく、依存症の悪循環(ストレスに対処するために依存するものに頼ってしまいまたストレスとなること)を止めるのに、マインドフルネスや認知行動療法も、この集団療法でスキルとして身に着けてもらうことは、当事者の生きづらさの軽減に役立ちうると思われます。

岩隈准教授との議論にもありましたが、リオマープではグループで行うことによるピアサポート効果とともに、全く同じ悩みの人を見るよりも、悩みの根源は共通していて少し違う人を見ることで気づくことも多いのではないかと期待しているところです。(必要に応じて専門機関にエスカレーションする用意をしつつ、専門分化する前の共通事項に着目して重症化の予防や治癒を目指すのが当院の目標であり、守備範囲です)

わたしたちのリオムメンタルクリニックでは通常の保険診療に加えて、公認心理士によるカウンセリングも受け付けますが、後者は保険が効かない(心理士によるカウンセリングは保険適用外で自費診療)ため金銭的に負担が大きくなりがちです。わたしたちリオムの依存症集団療法リオマープは、各種健康保険が利用可能な「集団精神療法」(保険適用)という枠組みを利用することで、参加者の負担をできるだけ小さくすることにも配慮しました。(保険適応の集団療法は各種健康保険が使え、3割負担の方で1回900円程度、経済的に苦しい方は自立支援医療(精神通院)の手続きが認められると1回300円程度で受けられます)

毎回の集団療法結果は診療録の一部として記載され、並行する診療を最適化するうえでその情報が役立つうえ、プログラムの過程でマインドフルネスやSSTなどのスキルを身に着けてもらい「自分のトリセツ」を各自が作り上げることで(プログラム終了時に完成します)、各人に最適された再発予防策を講じる助けになります。

上述の松本先生も、「意志を強くするのではなく,自分の弱点を知り,薬物再使用の危険の高い場所や状況は避けるようにしましょう」ということをおっしゃっています。これは「強くなるより賢くなれ」という患者さんへのメッセージであり、当院のリオマープでもこの方針を採用して土曜日午後隔週で開催(11時間を全12回で、半年で修了。修了証を交付し、参加の過程で自分トリセツが完成)しています。

働く方のメンタルヘルスに強みを持つ当院「リオムメンタルクリニック」の治療やカウンセリング、そして公的な集団精神療法の枠組みに準拠した依存症対策プログラム「リオマープ」が少しでも役に立てば、スタッフ一同うれしく思います。

依存症とまでいえないが思い当たるところがあるという方も、もしそのことで思い悩んでいたり、つらい思いをしたり、あなたの生活や周囲の人々に悪い影響を与えているようであれば、遠慮せずご参加ください。

お問合せ: riomh.counsel@gmail.com


クリニック案内

アクセス

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    地下鉄深江橋(北)停留所から徒歩5分

医院名
宮木医院リオムメンタルクリニック
院長
宮木 幸一
住所
〒536-0022
大阪府大阪市城東区永田4-8-10

診療科目
心療内科・精神科・一般内科
電話番号
TEL:06-6180-4111